天正少年使節―安土桃山時代・江戸時代初期 (小学館版学習まんが―少年少女人物日本の歴史)

本書によって｢天正少年使節｣について初めて詳しく学ぶ事ができました。派遣された使節のﾒﾝﾊﾞｰはｷﾘｼﾀﾝ大名の大友、大村、有馬の三大名の使者として四人の少年が選ばれ、天正十年(一五八二)から八年の歳月をかけてﾖｰﾛｯﾊﾟに赴き、ﾛｰﾏ教皇との謁見を果たして無事日本に戻って来たのであります。その四人の少年は、ｾﾐﾅﾘﾖといふｷﾘｼﾀﾝの寄宿学校で学ぶ有為なる少年達でした。ﾖｰﾛｯﾊﾟで大歓迎された彼等でしたが、日本帰国の時には、豊臣秀吉の禁教令が出された後で大いに逆風が吹き始める中でありました。併し、その逆風の中を信仰を守り通し、本書で主人公として描かれた中浦ｼﾞｭﾘｱﾝの最後は殉教者として自らの命を捧げる事となりました。悲しい残酷な結末になりましたが、日本の歴史が辿った史実でありました。純粋に健氣な人生を全うした彼等を本書の責任監修者である結城了悟氏は、｢ｼﾞｭﾘｱﾝはぎせいになったことによって、愛をしめし、信仰の自由を教えたのです。｣と語ります。天正少年使節のｴﾋﾟｿｰﾄﾞを丁寧に拾ひながら描かれた本書に私は貴重なﾉﾝﾌｨｸｼｮﾝの香りを感じ取るものであります。